東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

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ドレス現象によるNK細胞の細胞死機構の発見


NK細胞は免疫監視機構の中心的な役割を担う自然リンパ球として知られています。感染やがん化などにより異常化した細胞は、細胞表面にNKG2DLとよばれる分子(がん細胞の目印)を発現しますが、NK細胞はNKG2D受容体を介してこの異常化を認識し、速やかに排除します。これまで、NK細胞の活性化や増殖に関して研究が進んでいましたが、活性化し増殖したNK細胞がどのようにして減少し制御されるかは分かっていませんでした。
 私たちは今回NK細胞とがん細胞の相互作用において、がん細胞のみならずNK細胞も細胞死に至る現象を発見しました。NK細胞ががん細胞を傷害するためには、NKG2DとNKG2DLの結合などを介した両者の密な接触 (免疫シナプスの形成)が必要ですが、この過程においてがん細胞上の標的分子であるNKG2DL(がん細胞の目印)をNK細胞自身が獲得することが分かりました。NKG2DLを獲得したドレスNK細胞(NKG2DL-dressed NK細胞)は、他のNK細胞によって標的と認識され、排除されることが明らかになりました。こうした現象により、がん細胞がNK細胞の免疫監視機構を回避する可能性が考えられます。今後、標的分子NKG2DLの獲得を特異的に阻害することができれば、NK細胞によるがん免疫治療の効果を増強できる可能性が期待できます。

以上の研究成果は2013年5月20日の米国科学アカデミー紀要での論文掲載に先立ち、速報(Early Edition)として電子版で掲載されました。
Nakamura K, Nakayama M, Kawano M, Amagai R, Ishii T, Harigae H, Ogasawara K. Fratricide of natural killer cells dressed with tumor-derived NKG2D ligand.  Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 May 20.

*ドレス現象:ドレスを着るように後天的に変化する細胞の現象。今回は、NK細胞が癌細胞のNKG2DL分子を膜ごと獲得し後天的に変化してしまう現象。筆者らの造語
リンク先: http://www.pnas.org/content/early/2013/05/17/1300140110

図の説明:
NK細胞はNKG2Dを介してがん細胞上のNKG2DLを認識し、がん細胞死を誘導する。同時に、NK細胞はがん細胞由来のNKG2DLを獲得し、他のNK細胞によって認識され、細胞死に至る

>>詳細(PDF 333KB)

2013年05月23日 掲載