東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

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造血器腫瘍の新たな発症機序の解明 -細胞内輸送との接点-

図

真核細胞内では、様々な細胞内小器官が独立に配置され整然と機能しています。小器官の間では、精緻な物流ネットワーク(細胞内輸送)が張り巡らされており、輸送される積み荷分子は小胞と呼ばれる構造体にパッケージングされます。細胞内輸送機構の破綻と発がんとの関連が長年示唆されていましたが、科学的根拠が乏しい状況が続いていました。 免疫遺伝子制御分野の佐竹正延教授・昆俊亮助教らの研究グループは、輸送小胞の一つであるクラスリン小胞の形成を調節するsmap1遺伝子を欠損したマウスを作成したところ、12ヶ月齢以降の高齢smap1欠損マウスがヒトの重篤な血液疾患である骨髄異形成症候群(MDS)を発症し、一部急性白血病に移行することを見出しました。またその分子機序にも迫り、smap1欠損血液細胞で、血清中の鉄を細胞内へと供給するトランスフェリンの取り込みが亢進していること、さらには増殖因子受容体であるc-Kitの細胞内輸送が障害されることによりその分解が遅延し、それに伴ってc-Kitシグナルが増大・継続していることを明らかにしました。このことから、トランスフェリンやc-Kitの輸送異常に代表されるクラスリン輸送系の脱制御が素因となって、MDSならびに白血病を引き起こすことを個体レベルで初めて実証しました。MDSは特定疾患に指定されている重要な研究対象疾患であり、smap1欠損マウスはその治療戦略・探索のツールになり得ること、さらには造血器腫瘍をはじめ、輸送関連分子の機能異常が想定されている悪性腫瘍での詳細な解析が進むものと期待されます。

以上の研究成果は、2013年2月22日12:00(米国東部時間)に米科学雑誌The Journal of Clinical Investigation電子版に先行発表され、掲載号(3月)では注目研究「JCI Impact」に取り上げられます。

Kon S, Minegishi N, Tanabe K, Watanabe T, Funaki T, Wong WF, Sakamoto D, Higuchi Y, Kiyonari H, Asano K, Iwakura Y, Fukumoto M, Osato M, Sanada S, Ogawa S, Nakamura T and Satake M.
Smap1 deficiency perturbs receptor trafficking and predisposes mice to myelodysplasia.
リンク先URL; http://www.jci.org/articles/view/63711

【図の説明】
SMAP1欠損細胞ではトランスフェリン受容体 (TfR)の取り込みが亢進するほか、c-KitのMulti-Vesicular Body (MVB)からリソソームへの輸送が遅延し、それに伴ってc-Kitシグナルが増大・継続する。12ヶ月齢以降のSMAP1欠損マウスはMDSを発症し、MDSを発症したマウスの一部は急性白血病に移行する。

2013年02月25日 掲載