東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

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細菌と免疫系との新たな攻防メカニズムを解明しました

被験者

細菌が生体内に侵入するとマクロファージを中心とした自然免疫細胞が応答しその病原体を排除しようとする一方で、病原体も様々な手段により免疫システムから逃れようとします。このように感染時には宿主と病原体の攻防戦が繰り広げられます。私たちは代表的なグラム陽性菌の黄色ブドウ球菌に対する免疫応答を解析する目的で、その細菌に直接結合するマクロファージ受容体を探索した結果、Paired Ig-like receptor(PIR-B)を同定しました。PIR-BはMHC class Iに結合する免疫抑制受容体として知られていますが、細菌感染における役割についてはよく分かっていませんでした。私たちはPIR-B遺伝子欠損マウスおよびそのマクロファージを用いた解析からPIR-Bは黄色ブドウ球菌感染時に炎症応答を抑え細菌増殖にプラスに働くことを明らかにしました。さらにPIR-Bの細菌リガンドを探索した結果、黄色ブドウ球菌細胞膜構成成分のリポタイコ酸がPIR-Bへの結合に必須であることを見出しました(図)。これらの結果は、PIR-Bは細菌感染に対する生体防御因子として機能するのではなく、むしろ細菌側がその病原性獲得のためにPIR-Bを標的としている可能性を示唆しています。これらはマウスを用いた実験結果ですが、ヒトにおいても同様に細菌が免疫抑制受容体を標的とすることが明らかとなれば、新たな感染制御法の開発に繋がることが期待できます。

以上の研究成果は2012年12月15日にJournal of Immunology誌に掲載され、Faculty of 1000のspecial significance 論文として選出されました。

Nakayama M, Kurokawa K, Nakamura K, Lee BL, Sekimizu K, Kubagawa H, Hiramatsu K, Yagita H, Okumura K, Takai T, Underhill DM, Aderem A, and Ogasawara K. Inhibitory receptor PIR-B is exploited by Staphylococcus aureus for virulence. J. Immunol. 189, 5903-5911, 2012
リンク先:http://www.jimmunol.org/content/189/12/5903.abstract

図の説明 : 黄色ブドウ球菌(S. aureus)はリポタイコ酸(LTA)を用いてPIR-Bを標的とし、Toll様受容体(TLR)の炎症応答を抑制することにより病原性を獲得する。一方で、免疫システムもLTAを認識するスカベンジャー受容体を用いてその細菌排除を行うことによりその感染を克服する。このようにLTAをめぐって細菌と宿主の攻防戦が繰り広げられる。

2012年12月21日 掲載