東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

ニュース

ヒト赤血球中のアミロイドβ蛋白の解析に成功 -アルツハイマー病の病態解明への前進-

アミロイドβ蛋白(Aβ)はアルツハイマー病の脳に形成される老人斑の主要構成成分であることが知られています。脳内Aβの分子病態についてはこれまで多くの研究が行われ、また血漿中にもAβ活性があることが見出されています。一方、血球成分の一つである「赤血球」に含まれるAβについてはこれまでほとんど知見がありませんでした。脳内Aβと血中(血漿や赤血球)Aβはどのような関係にあるのだろうか。赤血球Aβを調べることはアルツハイマー病を理解する上において大変重要な事と思われます。今回、老年医学分野の荒井啓行教授、古川勝敏准教授と農学研究科の宮澤陽夫教授、仲川清隆准教授、喜古健敬研究員等のグループはヒト赤血球に含まれるAβを定量したところ、赤血球中のAβは年齢に依存して上昇し、20歳台に比し50歳台では大変高値であることが明らかになりました。ヒト赤血球Aβ42やAβ40は、それぞれ血漿Aβ42やAβ40と正の相関を示しました。さらにアスタキサンチンやカロテノイドといった抗酸化剤を服用すると赤血球Aβ42・Aβ40ともに低下することを見出しました。赤血球Aβ42・Aβ40値に依存して赤血球膜リン脂質過酸化物も高値となることも分かりました。これらの結果から、赤血球中のAβはアルツハイマー病の診断に有用なバイオマーカーになりうることが期待されます。また一方、アスタキサンチンやカロテノイド等の抗酸化作用のある薬剤はアルツハイマー病の治療薬になる可能性も示唆されました。今後は、より多くの高齢者やアルツハイマー病患者さんから得られた赤血球Aβを解析し、且つ臨床応用が可能であろう抗酸化物質を同定し、アルツハイマー病のバイオマーカーと先制医療開発のための研究を継続したいと考えています。

掲載雑誌:PLOS ONE 7, Nov 2012, e49620
論文名:Amyloid β Levels in Human Red Blood Cells
著者:Takehiro Kiko, Kiyotaka Nakagawa, Akira Satoh, Tsuyoshi Tsuduki, Katsutoshi Furukawa, Hiroyuki Arai, Teruo Miyazawa
2012年12月05日 掲載