東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

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健常小児における海馬体積と睡眠時間の相関

東北大学加齢医学研究所兼務の瀧靖之教授(東北メディカルメガバンク機構)らの研究グループが、健康な5歳~18歳の子供たちを対象に、平日の睡眠時間と、脳の記憶を司る領域である海馬の体積の関係を明らかにしました。

被験者
図1

これまでの研究から、睡眠時間の短い子供たちは、学業成績や記憶力などが低いとの報告が複数見られました。瀧靖之教授(東北メディカルメガバンク機構、加齢医学研究所兼務)は、加齢医学研究所認知機能発達研究部門において、睡眠時間と脳の形態、特に記憶に関わる海馬の間に相関が見られるかを明らかにするため、5歳~18歳の健康な小児290人を対象に、脳MRIを撮像して、睡眠時間と脳形態との相関を解析しました。(図1)

その結果、平日の睡眠時間と,海馬の体積には有意な正の相関が見られました。(図2) つまり、睡眠時間を十分に取っている子どもは、睡眠時間が短い子どもに比べ、海馬の体積が大きいことが分かりました。

動物実験において、睡眠を剥奪すると海馬体積の減少が発生することが確認されており、ヒトにおいても、原発性不眠症や睡眠時無呼吸症候群においては、海馬体積の減少が見られることがわかっています。このメカニズムとして、睡眠時間の減少が、海馬における神経細胞の新生、あるいは分化を抑制することが示唆されています。

結果
図2

海馬の体積が小さいことは、ストレスやうつ病、高齢者でのアルツハイマー病などで報告があることから、海馬の体積が大きいことは、その後の人生におけるいくつかの病気を回避する上でも重要である可能性が考えられ、また子どもの時の生活習慣、具体的には十分な睡眠が健やかな脳の発達を促進する上で重要であることが分かりました。

また、海馬は記憶の処理などに重要な領域のため、小児における十分な睡眠は、脳の健やかな発達のみならず、認知力の向上の点からも非常に重要であると考えられます。