東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

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開口放出のカルシウムセンサーの発見

C2ドメイン
    図1

蛋白質等の大分子は、細胞内小器官間の間を ‘小胞輸送’によって輸送される。小胞と標的膜の結合・融合はtrans-SNARE複合体によって担われるが、trans-SNARE複合体形成のためには多くの制御因子が介在している。神経伝達物質放出のように、多くの細胞は刺激に応じて細胞内小胞(顆粒)を開口放出する。その引き金は細胞内カルシウムイオン濃度の上昇であり、神経細胞ではsynaptotagminがカルシウムセンサーの役割を担うことが明らかにされているが、他の細胞でカルシウムセンサーは不明なままであった。
 我々は以前、血小板顆粒放出制御因子としてMunc13-4を同定した(Shirakawa et al, J Biol Chem 279, 10730-10737, 2004) 。Munc13-4は血小板や肥満細胞、細胞傷害性Tリンパ球等で開口放出を制御する。その遺伝的欠損は細胞傷害性Tリンパ球の機能異常を来し、家族性血球貪食症候群(FHL)となり、診断後速やかな骨髄移植を要する。我々は我が国の小児科の研究グループとの共同研究で、我が国における遺伝子異常とFHLの病態の関係を明らかにし(E. Ishii et al. Blood 105, 3442-3448, 2005)、また、送付された血液から、Munc13-4の発現が非常に高い血小板中を単離し、そのMunc13-4蛋白質の解析による迅速診断法を確立することで実臨床に貢献してきた(Y Murata et al. Blood 118, 1225-1230, 2011)。
  Munc13-4
     図2
さて、Munc13-4はN末端とC末端にひとつずつC2ドメインと名付けられたカルシウム結合ドメインを持つ120 kDの分子である(図1)。今回、我々は米国ウィスコンシン大学との共同研究により、Munc13-4の両方のC2ドメインにはカルシウムが実際に結合し、両方のC2ドメインとも顆粒放出制御には重要であること(図1)、N末端のC2ドメインはカルシウム依存性のMunc13-4のsyntaxin (SNARE蛋白質のひとつ)への結合に、C末端のC2ドメインは、カルシウム依存性の細胞膜(酸性リン脂質)への結合に重要であることを示した。さらに、SNARE蛋白質を含有するリポソームを用いた実験により、Munc13-4はカルシウム依存性にtrans-SNARE複合体の形成を促進することを示し(図2)、Munc13-4は開口放出におけるカルシウムセンサーであることを証明した。小胞輸送・開口放出は血小板のみならず、あらゆる細胞の基本的な機能であり、本研究成果はその分子メカニズムの明らかにしていく上で重要な知見である。

<論文題目>
K Boswell, D James, J Esquibel, S Bruinsma, R Shirakawa, H Horiuchi, T Martin (2012) Munc13-4 reconstitutes Ca2+-dependent SNARE-mediated membrane fusion. J Cell Biol in press


<本件問い合わせ先>
堀内 久徳(ほりうち ひさのり)
東北大学加齢医学研究所 基礎加齢研究分野 教授
〒980-8575 仙台市青葉区星陵町4-1
TEL:022-717-8463
E-mail:horiuchi*idac.tohoku.ac.jp(*を@に換えて下さい)
2012年4月18日 掲載
 

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