東北大学加齢医学研究所 加齢医学研究拠点 | Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University

ニュース

膀胱癌の悪性化規定因子の発見

マウスで膀胱癌細胞の肺転移
    図1

低分子量GTP結合蛋白質は、細胞増殖や細胞遊走等種々の細胞機能を制御する細胞内スイッチとして働く。GTPが結合すると活性型となってスイッチオンとなり、GDPが結合するとスイッチオフとなる。低分子量GTP結合蛋白質のひとつであるRalは、膵臓癌や大腸癌や膀胱癌組織で強く活性化していることが知られている。Ralの活性化因子RalGEFはこれまでに6つの遺伝子が見いだされていた。不活性化因子であるGTPase-activating protein (GAP)は長らく不明であったが、われわれが世界に先駆けて同定し、哺乳類では2つのRalGAPが存在し、活性サブユニットα1と調節サブユニットβで構成されるRalGAP1、活性サブユニットα2と共通のβより構成されるRalGAP2と名付けた(Shirakawa et al, J Biol Chem 284, 21580-21588, 2009)。
 今回我々は、京都大学病院泌尿器科との共同研究で、浸潤性膀胱癌細胞では、正常膀胱で強く発現している活性サブユニットRalGAPα2サブユニットの発現が低下し、その結果としてRalが強く活性化していること、浸潤性膀胱癌細胞へのRalGAPα2の強制発現はマウスで膀胱癌細胞の肺転移を抑制すること(図1)、 マウスで膀胱癌細胞の肺転移
    図2
化学膀胱発癌を誘導すると野生型では認めなかった浸潤性膀胱癌がRalGAPα2遺伝子欠損マウスでは約半数に生じたこと、膀胱癌組織でRalGAPα2が発現低下したヒト膀胱癌患者の生命予後は不良であること(図2)を見いだした。このようにRalGAPα2の発現低下は膀胱癌浸潤・転移に深く関わっており、今後、RalGAPの発現解析による膀胱癌の悪性度診断やRal-RalGAP経路を標的にした治療薬の開発に繋がることが期待される。

<論文題目>
R Saito, R Shirakawa, H Nishiyama, T Kobayashi, M Kawato, T Kanno, K Nishizawa, Y Matsui, T Ohbayashi, M Horiguchi, T Nakamura, T Ikeda, K Yamane, E Nakayama, E Nakamura, Y Toda, T Kimura, T Kita, O Ogawa, H Horiuchi (2012) Downregulation of Ral GTPase-activating-protein causes tumor invasion and metastasis of bladder cancer. Oncogene in press


<本件問い合わせ先>
堀内 久徳(ほりうち ひさのり)
東北大学加齢医学研究所 基礎加齢研究分野 教授
〒980-8575 仙台市青葉区星陵町4-1
TEL:022-717-8463
E-mail:horiuchi*idac.tohoku.ac.jp(*を@に換えて下さい)
2012年4月18日 掲載
 

ページトップへ ↑