加齢研ニュース 第41号

           (平成16年6月1日)

所長室便り
新任教授挨拶
分野紹介
研究員会便り
研究会同総会広報
編集後記


「所長室便り」 帯刀 益夫

 平成16年4月1日から、いよいよ「国立大学法人東北大学」がスタートした。ここに到るまで、昨年度の後半から、法人に移行するための制度的な見直しや組織の管理運営など、多様な課題について会議、作業が繰り返され、何とかこぎ着けたと言うところであるが、これらの最近の状況をかいつまんでお知らせしたい。
 法人化後の大学運営は、「役員会」が大学運営に関する最終決定・執行機関としての中心的な役割を果たすことになり、従来の評議会の役割は、「経営協議会」(財務に関する審議機関)、「教育研究評議会」(研究教育全般に関する審議機関)に分割された。4月1日、法人発足と同時に開催された「教育研究評議会」では、国立大学法人東北大学の「中期目標・中期計画」案が承認されたが、これは、これまで早稲田副総長が中心となってとりまとめられ、昨年10月の評議会の承認を受け、文部科学省に提出し「国立大学法人評価委員会」の評価・審査を受けたのち、さらに何回かの修正作業を行い、最終案として提出されたもので、この後、経営協議会の承認を経て文部科学省に提出され、これに基づいて今後の東北大学の運営、並びに大学の評価が行われることになる。また、年度毎の具体的な業務計画の提出も必要となり、16年度計画についても「中期目標・中期計画」と同様の作業経過をたどり、提出された。これらは、部局の計画の提出も伴い、加齢医学研究所でも、「中期目標・中期計画」、「業務計画」について大学全体の方針とつきあわせた上で修正作業を行って提出しているが、今後、これは主として、東北大学の役員会が、各部局の方針や活動を把握し、評価を行い、大学運営の上から役立てるために活用することになろう。
 総長選考会議については、これまで議論が進んでいなかったが、4月1日の研究教育評議会で最終的に、総長、理事を含まず、経営協議会の外部委員と研究教育評議員会の推薦する委員とで構成することとして、選挙が行われ委員が決定された。
 法人化後は総長・役員会のリーダーシップ機能がより強化されることになるが、総長・役員会としては、今後の大学運営について各部局の活動の実状をより正しく把握し、良い面をより伸ばすように援助し、全体として大学の活動のレベルアップを図りたいと考えているようである。そして、各部局の運営執行責任を持つ「部局長」と大学全体の運営に責任を持つ「役員会」との間の連携のため、「部局長連絡会議」を設けることとしたが、大学本部の大学運営方式とその情報の伝達形式等については、現段階ではまだ模索の段階であり、改善の余地がかなりあるように思われる。
 加齢研では、昨年度から法人化後を考慮に入れて副所長(福田教授)を置き、総務人事、財務、研究推進、将来計画の4つの常置委員会を設置し、新しい運営体制を試行的に進めてきており、この4月からは、これら常置委員会に加えて部局運営の中心的役割を持つ運営会議を設置し、4つの常置委員会の委員長と研究教育評議員で構成することとし、また、これまでの拡大教授会を教授会に、教授会を専任教授会として、兼務の教員の参画も認めることとして、運営をスタートしたが、まだ混乱期にあり、研究教育以外の管理運営業務を簡素化しつつ、情報伝達、意見の集約などを考慮に入れた運営方式については、改善の余地がかなりありそうである。
 法人化後、各大学はそれぞれの個性を明確にして運営を進めていこうとしている。最近、多くの大学がホームページを一新したが、総長の挨拶などからその大学の個性や特徴などが伺えるものもある。東北大学もホームページを一新し、新しい組織の陣容や、新キャンパス計画案、百周年記念事業なども見ることができる様になっているのでご覧いただきたい。加齢研のホームページも刷新を計画中であり、その作製についてもご協力をお願いしたい。
 法人化により、教職員の人事制度や就業規則が制度上変わることになった。これまでの国家公務員として身分から非公務員としての大学法人の教職員となることで、これまでの国家公務員法、教育公務員特例法の適用外になることが大きな変化である。そのため、法人化推進本部第2部会(北村副総長が座長)では、これまでの就業の方法を大幅に変えることなく就業できるように新たな就業規則案を策定し、原案の説明会を行い、教職員からの意見聴取をしつつ最終案を策定し、これを教職員に周知徹底するため、最終的に各部局の過半数代表者と労働契約を締結する形を取り、4月1日から新たな就業規則のもとに就業することになった。多くの教員はいわゆる裁量労働制に基づいて教育研究に従事することになったが、これまでのところ、具体的に勤務態様などとくに大きな変化は無く進んでいると思われる。就業規則と共に、安全衛生法上の義務もでき、各部局は安全衛生委員会を設置し、教職員の勤務上の安全衛生に留意し、対応措置を行うことが必要となっている。
 また、人事制度は大きくは国家公務員制度を継承する形を取っており、これも当面大きな変化は無いが、少なくともこれまでの「教官」という名称から「教員」という名称に代わり、規約などの上からも全て変更されている。今後の法人としての人事制度等の改訂については、教員の身分、給与関係、停年制度など未だいくつかの課題があり、役員会等を中心としてさらに対応を検討し提案がなされてくるものと思われる。
 法人化後は、従来の教職員の「定員」の概念はなくなり、各大学法人で人件費を適切に管理する事が求められることになり、これまで各部局の「定員」は「配置職員数」となり、人件費総額の範囲内で適切な自由度のもとに運用してよいことになった。これに対応して、東北大学では中央管理の人件費枠を全体の5パーセントとして、各部局のこれまでの定員枠から中央枠に吸い上げる形を取り、役員や全学教育その他法人化に伴って必要となった組織などの配置職員の人件費に当てることとした。この部局の「配置職員数」と人件費総額の算定については、部局の構成員の状況と人件費総額の算定の基準をどこに置くかで部局毎の運営に大きな差ができることになり、最終的な決定までに時間を要したが、当面(16年度)は、現員の人件費を算定の基礎として考えることで大きな変化は無い形で出発することとなった。加齢研では、この4月1日から学内共同利用施設の遺伝子実験施設を統合し、新たに附属ゲノムリサーチセンターとして発足した。このセンターを含めて加齢研の「配置職員数」は51名としてスタートすることとなり、大学本部と相互に確認をしている。また、各部局の「配置職員数」は、人件費総額の範囲内で適切な自由度のもとに運用してよいことになったことから、部局としても、その将来の方向性に対応した人員配置などをより自由度を持って考えられることになったが、この方式がこのままどこまで継続するのか、人件費の算出なども不明のままでは、直ちに大きな変革を導入することは難しい。また、当面、国立大学法人の人件費に対する削減(効率化係数)は、設置基準に対応する教員に対しては行わないとしているが、将来的に効率化を迫られる可能性もあり、安定的に考えることは難しい状況にあるといえる。しかし、このままでは、大学の経営上大きな変革は期待できないため、今後、この点についても、役員会などで、新しい方向性の提案が出されてくるものと思われるし、加齢研としても、この状況の範囲内で将来計画を立て、今後の人員配置などを考えて行かなくてはならない。大学の予算については運営費交付金という形で大学一本の形となり、物件費についても大学として自由度が高くなったが、本学では、16年度は15年度とほぼ同様の運営形式として部局への配分が行われる予定であるが、来年度以降の方向については未だ不明であり、効率化係数などを考慮すれば、部局の予算は減る方向になると考えざるを得ず、今後の対応が必要である。
 大学附置研究所という立場からは、法人法案の国会審議に入る段階で、「大学の教育研究組織の省令化」がはずされ、大学附置研究所の位置づけや財政的裏付けはこれまでより弱いものとなった。国立大学協会などでも附置研究所を持つ大学は少数であることから、附置研究所問題は取り上げられないため、附置研究所を多く持つ7大学の附置研究群が7大学学長会議などを通してこの課題に取り組むよう要請することとしている。また、学内においては、研究所の連携を強化した取り組みが進められてきており、新たな研究所連携研究機構の構想、研究所を中心とする学際的な連携研究プロジェクトを推進するなど、研究所の活動の認識を高め、運営の財政基盤などを強化するための取り組みも進めている。
 医学部と歯学部の附属病院が統合し、東北大学附属病院という新しい組織形態となったが、法人化後は、統合病院の経営が大きな課題となってくため、その改善策や、1部局として一体化した運営ができるよう審議を進めている。
 「21世紀COEプログラム」の募集がもう一回行われることとなり、加齢研としては、これまでの「医工学領域」、「シグナル伝達病」の2つのプロクラムに参加しているが、今回生命科学研究科等とともに新たな提案を提出し、学内審査では高い評価を得て申請したので、採択されることを願っているところである。また、振興調整費のCOE「先進医工学研究機構」が5年の予定でスタートしたが、これにも加齢研関係の研究者が何人か参画しており、加齢研の活動が学内のライフサイエンスの組織の上から広がりを持った活動を進めているといえる。
 法人化対応のため、大学として長期的な視野に立った計画が進んでいない状況にある。法人化後はこれまでのいわゆる概算要求のような形での将来計画がどうなるか不明な点もあるが、加齢研としても今後の方向性や、これを取り巻くライフサイエンス研究の将来的な課題についても改めて考えて行かなくてはならない状況にある。本研究所は、加齢研に改組してから、早いものですでに10年を経過したが、構成員のみなさんの努力のおかげで、研究、教育、診療にまたがり、優れた実績を上げてきているといえる。21世紀に入り、高齢化社会を迎えて、加齢研の方向性の正しさや社会的要請はより強くなっており、大きな組織の改編というよりは、この研究の方向性をいかに実質化し、今後さらに良い研究を推進して成果を出す事により、研究所の評価を高いところに定着させ、社会的に認知させることが求められているといえる。その意味では、構成員がのびのびと良い研究ができるための環境整備をする事も重要と思われる。また、ゲノムサイエンスを中心として有る程度成熟した生命科学の研究をもう少し新しい観点から見直して取り入れることも考え、加齢研だけでなく、本学のライフサイエンス研究教育の在り方について関連の組織と連携して考えてゆく時期に来ていると思われる。

「新任教授挨拶」  
 就任御挨拶 病態計測制御研究分野 山家 智之

 1月1日付を持ちまして、病態計測制御分野を担当させていただくことになりました山家智之です。一言ご挨拶させていただきます。私は、東北大学が国立大学である間に、最後に就任した「教官」としての教授ということになるそうです。新年度から採用される先生方は独立行政法人東北大学に雇用される「教員」ということになります。このような明治維新に匹敵する激動の中、気を引き締めて加齢医学研究所の名を辱めないように初心を忘れず頑張って行きたいと考えています。
 最初に自己紹介をさせていただきますと、私は町医者の倅だったので子供の頃からなんとなく医学部に入るもんだ。と思って育ち、昭和54年に仙台一高から東北大学医学部に進学しました。在学中は水泳部で泳いでいるか昭和舎で飲んでばかりいるかで、あまり勉強をした覚えはない、正直言いましてやや真面目でない学生でした。ただ、当時は卒業をすると入局という形でしたので、今のように初期研修で考えている時間もなく、進路についてだけは本当にずいぶん考えました。SGTでみた教室や先輩たちの噂話を思い出し、昭和舎の仲間たちともずいぶん相談したり先輩方の病院を訪ね歩いたり、いろいろ考えました。今思えばちょっと恥ずかしいのですが、はじめ、東北ではまだ多いだろう「無医村」に行こうかとも考えたりもしました。ただ、当時は医学部の授業に実技は一切ありませんでしたので、薬の名前も書けず、注射器の持ち方すら知らない自分が行って役に立つところとも思えず、どっかで修行しなくては。と、考えるようになりました。修行をするなら基礎から先端のところまでやらなければ、本当に何もないところでは役に立たないかもしれないと思われました。
 今思えば、なにもプライマリーケアから脳外科手術まで一緒にできる必要はないわけで、本当に医学生にも関わらず恥ずかしいぐらい何もわかっていなかったわけですが、当時はネットもなく情報も少なく、学生の認識などそんなものだったような気がします。思えば昭和舎や水泳部の先輩方のお話も、現在の認識から見るとずいぶんずれがあったようです。
 さて、当時、私の目にここが最先端なのかな ? と、思えたのが、脳外科と心臓外科でした。ここだけは気合を入れてSGT回ろう ! と、覚悟を決めて勉強しましたが、脳外科では一人の術者を回りが取り囲み、多くの医者が周りで、じっと、ただ見守っている光景を見て、「こ、これは、術者になるまで何年待てばいいんだろう…」と、不安になり、また胸部外科では初日からオーベンにすっぽかされ、暗い気持ちになりました。
 胸部外科であちこちの病院を見学したりして、研修先を考えましたが、どこへ行ってもオーベンの先生が「うちでも雑誌がそろっていて研究も勉強もできるよ !」と、話していたのが印象に残りました。勉強は好きではありませんでしたが、最前線の先生方でも研究って重視するんだなあ…と、思われ、そんなら最初から大学で研究すればいいんじゃないかしら ? と、ちょっと思えました。胸部外科の先生が、最先端ならあそこで人工心臓やってるよ ! と、当時の抗研MEに見学に来ることになり、仁田先生の人工心臓の実験を手伝うようになりました。
 当時の田中教授、仁田助教授の指導を受け、結局、そのままずっと研究室にいることになりました。従って、初期研修は結局、加齢研の先輩方と同じく、当時の仙台厚生病院ということになったわけです。
 ずいぶんいろいろ悩んだり、あちこち相談して散々考えた割には、結局は昭和舎からすぐ隣みたいな抗酸菌病研究所へ来ることになりました。 と、いうわけで、学部学生の時代から人工心臓実験のお手伝い、と言う形で入って、これまでずっと一貫して人工臓器の開発に関ってくることになりました。ちょうど私が卒業した年に、日本で最初の補助人工心臓の長期生存が東北大学病院で得られており、臨床治療試験の事務局が東北大に置かれたので、国内の人工心臓の開発研究が爆発的に盛り上がるのを目の当たりにして、現場でずっと勉強させていただきました。しばらくは臨床用補助人工心臓治療試験のコントローラ担当として、県内のどこかの病院の心臓外科で、手術後うまく心機能が回復できないケースが発生する度に、補助心臓や駆動装置を車に積んで飛び回る生活をしていました。手術の内容はともかく、心臓手術がうまくいかないケースだけは、当時一番たくさん見る立場にいる機会に恵まれたようにも思われます。
 また、どんなに素晴らしい人工臓器でも、商品化、企業化の過程でうまく進まないと、結局は最前線の病院での救命にまでは結びつける事ができないと言う現場の厳然たる大事な事実も認識することができました。開発から治療試験、製造認可、保険申請に至るまで本当にいろいろなことがあって、非常に貴重な勉強の機会を得ることができました。いまでは人工臓器学会の理事会などへ行っても、仁田先生たちの世代が退官されると、当時の医学的社会的経済的な経過を現場で見知っているのは私どもくらいになってきました。
 しかしながら当時開発された空気圧駆動型の補助人工心臓では実質的には患者はICUから出るのは難しく、QOLは極めて限定されます。そこで注目されるのが完全埋め込み型の補助人工心臓で、欧米では患者に埋め込んで退院させて社会復帰させるのが標準的になってきましたが、欧米の人工心臓はどう見ても日本人には大き過ぎます。日本では成人男性でも、半分くらいは埋め込みが困難な場合が多く、女性の場合など、小柄なおばあさんにはとうてい埋め込めません。日本人のためには、やはり日本人の為の小型人工心臓が望まれます。そこで注目されるのが小型のロータリーポンプです。人間の心臓のように容積型ではないので小型化が可能です。東北大学が東大・北大・早稲田・九大などと六大学総合で行っている波動ポンププロジェクトは、このロータリーを応用した人工心臓開発を目指すもので、全国規模で日本人のためのオリジナル人工心臓の実用化を目座して十億ほどの開発費が見込まれています。また、この他にも東北大では、北大、慶応などと共同で超小型のスクリューポンプを開発して居ます。日本では唯一の軸流ポンプで、磁性流体の応用により 構造を簡単化し、小型のシステムを動物実験まで進めて居ます。また、東北大学はご存知の通り工学部に優秀な先生が多く、いつも教えていただきながら 共同研究を展開して居ますが、最近注目されているナノテクノロジーを駆使して、人工心筋プロジェクトを開始しました。厚生科研費で億単位の予算が見込まれているので、帯刀所長の再生心筋に負けないようなシステムを目指して居ます。
 この他にも様々な人工臓器開発プロジェクトが現在私どもの研究室ではオンゴゴーイングで 、この4月からはJSTの人工食道計画がスタートします。再生医療の方法論を駆使して試作した食道管を、バイオメタル人工筋肉で動させるシステムで、世界で唯一の食物を飲み込める人工食道の企業化を目指して億単位の総予算を見込んでおり、研究成果活用プラザ宮城に新しいラボを発足させました。また、振興調整費でも、現在大腸癌の手術後にストーマを増設した患者の排便を制御する人工括約筋の開発研究を進めており、現在までずいぶんいろいろな省庁からの研究予算がついて形になってきたので欧米の企業から引き合いが来ていますが、英語の契約書の内容が良くわからなくて四苦八苦しています。
 このような人工臓器を初めとする東北大学の医工学研究は、21世紀COEプログラムにも採択され、加齢研からも二つの研究室が参画しています。この方面の研究は現在、盛り上がりつつある旬の時代に入りつつあるようです。
 個人的には、このような盛り上がり方は以前にも少し記憶がありまして、ちょうど私が卒業したころに、心筋梗塞などにPTCA(経皮的冠動脈形成術)の治療が行われるようになりました。先輩の病院で、県内では最初のPTCAに成功したというので「お前行って勉強して来い」と言われ、当時仙台では行われていなかったPTCAなどのインターベンション手術を習うようになりました。その後、東北地方の病院でもPTCAがどんどん広がっていき、日本国内でもどんどん増大して新しい学会が立ち上がり、会員数や症例数が鰻登りに上がっていくのをリアルタイムで体験することになりました。
 今思えば、日本経済もバブルの階段を上り始める時代でしたが、当時、人工心臓の分野とPTCAの分野は、同時に爆発的に勃興していきました。うちの先輩方も病院に出るとどんどんPTCAなどを手がけるようになり、皆様、いまも第一線で活躍しておられます。お互いに行き来しながら教えられることも多いので、加齢研の先輩方とのがりは今後も大事にしていけたらいいなと考えています。
 盛り上がる時期といえば、この度、独立法人としての東北大学に五十億を越える総予算でスーパーCOE、先進医工学研究機構が立ち上がりました。今まで共同研究を行ってきた医学部工学部の仲間たちのバイオエンジニアリングの研究テーマが次々と採択され、ナノセンサ、フォトセンサ、再生医療、カテーテル治療、人工臓器など、様々なテーマがうちのラボで動物実験に供されるようになりました。私どもの研究室にも皆様のご協力で大型実験動物の実験施設が整いつつあります。臨床に供する前の実験動物としては、うちで人工心臓実験に用いている山羊のような人間に近い体重の実験動物が必要になる場合も、特に医療機器開発では、多くなる趨勢にあるだろうと考えております。
 かかる観点からバイオエンジニアリングの研究成果をテストする臨床前試験を行なう最終研究機関として加齢医学研究所が有効なシステムを持っているということになれば、独り東北大学だけでなく全国全世界に通用する研究機関として有効になるのではないかと期待しています。
 加齢研の諸先生方も是非、新しいアイデアを、実際に人間の体重に近い大型動物で実験して患者様のお役に立つことができるように、いつでも気軽にうちの研究室に遊びに来てください。
加齢研の先生方、先輩の先生方のためにいつでも門戸を開き、研究の一助にでもなれるように努力していきたいと考えております。

「分野紹介」 腫瘍循環研究分野

 血管は、生体内に遍く分布する、個体が生存するために、そして臓器が正常に機能するために必要不可欠の構造物です。先進国の死因の2大原因は、「がん」と「動脈硬化性の脳・心血管疾患」ですが、これらのうち「がん」は、元々は血管を持っておらず、自らが発育するために血管を新生します。従って、腫瘍血管新生を制御することが可能になれば、あるいは腫瘍血流を遮断することが可能になれば、「がん」の治療に大きく貢献できるものと期待されています。一方、「動脈硬化症」では、血管が狭窄・閉塞して「狭心症・心筋梗塞」や「脳梗塞」などの「虚血性疾患」を発症しますが、このような「虚血性疾患」に対して血管を再生して虚血を解除する血管再生療法の臨床導入が期待されています。腫瘍循環研究分野では、このような血管が密接に関連し、しかも加齢に伴って生じる代表的な疾患を対象に、病態の解析と治療法の開発に資することを目的とした基盤研究に取り組んでいます。
 現在の腫瘍循環研究分野は、佐藤靖史教授、堀勝義助教授、安部まゆみ助手と、大学院生、研究生、秘書、技官、研究支援推進員など総勢13人で構成されています。腫瘍循環研究分野の名称は、平成5年4月の加齢医学研究所への改組にともなって付けられたものですが、平成6年12月に現在の佐藤教授が着任してからは、9年と4ケ月が経過したことになります。
 研究内容は、(1) 血管新生の調節機構に関する分子細胞生物学的は研究と、(2) 腫瘍微小循環の特性に基づくがん治療法の開発、の2つが大きな柱となっており、(1) を佐藤教授と安部助手、(2) を堀助教授が担当しています。以下、それらの内容について簡単に解説します。
 血管新生は、促進因子と抑制因子のバランスによって調節されています。これまでに多くの促進因子や抑制因子が同定されてきましたが、中でも血管内皮細胞に特異性の高い血管内皮増殖因子(VEGF)やアンジオポエチンは特に重要な調節因子と考えられています。血管内皮細胞は、これら因子の刺激に反応して種々の遺伝子を発現し、それら遺伝子産物が血管新生の調節に深く関与すると理解されています。そこで、血管新生の過程で血管内皮細胞において機能する転写因子の解析を進め、個々の転写因子の標的遺伝子を同定すると共に、血管内皮細胞に発現する転写因子には血管新生促進的に機能するもの、血管新生抑制的に機能するものがあることを明らかにしました。また、血管新生を調節する未知の遺伝子を得ることを目的に、マウス胚性幹(ES)細胞が血管前駆細胞を経て血管内皮細胞に分化する過程で発現する遺伝子群を、subtraction法を行いて単離・同定し、新規の血管新生調節因子を明らかにして、その機能の解析を進めています。さらに、VEGF刺激によって血管内皮細胞での発現が誘導される遺伝子群をcDNA microarray法を用いて網羅的に解析し、その中から、血管新生の刺激に反応して血管内皮自身が産生し、血管新生を抑制するnegative feedback調節因子としての機能を果たすと考えられる新規の機能性因子を見出し、解析を進めています。癌の微小循環特性については、腫瘍組織血流量、腫瘍増殖速度に日内変動があることを明らかにし、さらに腫瘍血流が増量し、増殖が活発となる時点で抗癌剤を投与することが、抗癌剤の腫瘍組織への到達量を高め、抗癌剤の特性の面からも有利に作用することを示してきました。また最近、新規抗癌剤の中に腫瘍血流を選択的に遮断して腫瘍組織を壊死に陥れる新しいタイプのものを見出し、その効果や作用機序についての解析を進めています。
 このように、腫瘍循環研究分野では、加齢に伴って発症し、しかも血管が密接に関わっている病態の解析や治療法の開発に結びつく研究を目指しています。所属している大学院生や研究生は、ほとんどが学内外の臨床の教室から期限を区切って配属された人達で、皆さん、決められた期間の間に成果を上げようと日夜研究に打ち込んでいます。私たちの研究に興味のある方、私たちの研究に参加したい方は歓迎しますので、連絡してください。
文責:佐藤 靖史

「研究員会便り」 研究員会委員長 安部 まゆみ

 昨年末、加齢医学研究所研究員会の第19代委員長に選任されたことは、私にとりまして、まさに青天の霹でした。私の知る限り、委員長は助教授か講師がされておられたので、根拠無く安心しきっていました。調べて頂いたところ、設立当時(昭和41年秋:加齢研ニュース第37号、長谷部栄佑先生の随想より)から平成3年までは助手の委員長のほうが多い事がわかりました。それでも、「何故私なのでしょう ?」と投票された方にお聞きしたい気もします。名前が平仮名なので書きやすかったからとか、18代、38年間に渡り男性委員長が続いたので、女性にさせてみようと思われたのかとか、もっと変な理由なのかとか、いろいろ想像しましたが、加齢研に長くいるからだと思う事にしました。
 ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、ここ数年は会員数減少による慢性的な財源不足で、定期預金を解約して支出にまわさざるを得ない状況になった事もありました。その度に会員数増加、会費徴収率向上が委員会のテーマにあげられましたが、分野委員の私は「勧誘しないとやっていけない会は、その存在意義を問われているのだから、予算がなくなるまで使い切ったら自然消滅してもいいのではないか」との持論を述べた覚えがあります。しかし最近、ある方から「百人単位の人間が同じ所で働いていれば、なんらかの会(互助的・社交的)が自然発生的にできるもの」と言われ、また、最近の会費徴収率の高さや、各種催し物への参加者の多さを見て、皆さんが本会の存続を希望しているのかもしれないと思うようになりました。このような考え方の私が委員長として適任なのか疑問ですが、歴代委員長がそうであったように任期中は研究員会の存続・発展に努めたいと思います。この号が出る頃には、加齢研は今年も新入研究者の方々を迎えていることでしょう。そこで研究員会について簡単に紹介いたします。会の目的は「研究条件の改善」、「福利厚生」、「文化活動」、「相互親睦」で、教授以外の研究に携わる全ての人に会員資格があります。会員数は平成15年度末現在で170名(助教授11、講師2、助手31、研究員17、院生90、研究生5、留学生9、医員5)です。具体的な活動スケジュールは、5月の総会と新入会員歓迎会、秋のスポーツ大会、1月の新年会、3月の退官教授記念講演会です。他にも、年2回の加齢研集談会における発表コンテスト、研究員会セミナーや研究機器メーカーの講習会等を主催します。
 研究員会セミナーは、会員ならどなたでも企画することができます。企画案を事務局に申し込み、採択されれば、講師への謝金として2万円を研究員会が支払います。平成15年度は申し込み件数が少なく、執行額が予算を大幅に下回りました。交通・宿泊費は出ませんが、学会等で来仙される研究者、東北大学の他部署あるいは近隣県の研究者に個人的にお願いして、新進研究者による興味深いセミナーを立案し、奮ってご応募下さい。今年度も大幅に下回れば、平成17年度予算は減額する予定です。
 前委員長の渡邊利雄先生の音頭で始まった顕微鏡講習会が好評でしたので、今年も行う予定です。内容についてや、顕微鏡以外でも希望等がありましたら、事務局にメールしてください。随時対応します。また、研究員会や研究所に対する要望・質問事項がありましたら、事務局にメールするか、各分野の委員にお伝え下さい。随時、あるいは月1回の研究員会定例委員会で検討・対応いたします。皆さんの研究員会をどしどし利用して下さい。
 尚、研究員会の催し物や定例委員会のお世話をしてくださっているのは、加齢研合同事務局(研究会同窓会、研究員会)事務員の斎藤秀子さんです。ご紹介とともにここで感謝の意を表します。事務局(斎藤さん)のメールアドレスは以下の通りです。hsaito@idac.tohoku.ac.jp

「研究会同総会広報」 庶務幹事 近藤 丘

庶務報告

  1. 研究会同窓会会員の確認(平成16年5月現在)
      通常会員 828名
      ( 名誉会員65名、所外560名、所内203名)
      賛助会員 31施設
      購読会員 20件
      物故会員
       小野塚隆勇先生 平成15年 5月13日
       渡部  昭先生 平成15年11月24日
       松井  要先生 平成15年12月29日
       萩原  昇先生 平成16年 4月11日
  2. 加齢研ニュース40号発行
       平成15年12月
  3. 第121回集談会
     日 時 : 平成16年1月30日(金) 午後1時から
     場 所 : 加齢医学研究所大会議室
     一般口演(8題)、石岡千加史新任教授特別講演
     第11回加齢医学研究所研究奨励賞授与式・受賞記念講演
     岡野  聡(遺伝子機能研究分野、山形大学遺伝子実験施設)
     佐藤 達也(分子神経研究分野)
  4. 第29回加齢医学研究所シンポジウム
     テーマ:個体老化の分子的基盤
     日 時:平成15年12月4日(木)午後1時〜6時
     場 所:艮陵会館 記念ホール
     代表世話人:安井  明
    第30回加齢研シンポジウム
     テーマ:放射線影響と発癌:ゲノムダイナミズムから個体ダイナミズムへ
     日 時:平成15年12月20日(土)午後0時30分〜午後5時20分
     場 所:艮陵会館 記念ホール
     代表世話人:福本  学
    第31回加齢研シンポジウム
     テーマ:癌診断治療の進歩:トランスレーショナルリサーチの立場から
     日 時:平成16年1月16日(金)午後1時〜
     場 所:加齢研大会議室
     代表世話人:工藤 俊雄
  5. 加齢研ニュース発行
     41号 平成16年 6月

今後の予定

  1. 第122回集談会
     日 時 : 平成16年6月26日(土)午後1時から
     場 所 : 加齢医学研究所大会議室
     一般口演,新任教授特別講演
  2. 平成16年度加齢医学研究所研究会同窓会総会、講演会および懇親会
     日 時 : 平成16年6月26日(土)集談会終了後
     場 所 : 総 会 加齢医学研究所大会議室午後4時から
     講演会 加齢研大会議室 午後5時から
     「右と左の科学、分子から結晶、生体個体まで」 講師 黒田 玲子氏
     懇親会 プロジェクト総合研究棟(旧加齢研病院)セミナー室午後6時15分から
  3. 第32回加齢研シンポジウム・特定領域研究悩のパターン形成シンポジウム
     日 時:平成16年10月29日(金)
     場 所:加齢研大会議室
     テーマ:Vertebrate brain plan(仮題)
    (International Symposiumといたします)
  4. 加齢研ニュース発行
     42号 平成16年12月
     43号 平成17年6月

「編集後記」

 東北大学が国立大学法人となってから初めての加齢研ニュースです。おかげさまで、これまで通り発行することが出来ました。今後ともご寄稿などのご協力をよろしくお願いいたします。
舟橋淳一